Special to me
「そうだよ。来月からは車掌の仕事をするしね」
『へぇ、じゃぁ、駅員じゃなくて、電車に乗るってこと?』

いよいよ、来月から助役への修業の一環である車掌乗務区での仕事が始まる。

半年間、そこで車掌としての仕事をして、その後、助役としてどこに配属になるか・・・今はそんなところだ。

『そもそもさ、馴れ初めは何だったの?』

桐生からそう聞かれたので、私は今までのことを全て話した。

『へぇ、中学生の頃からかぁ。米原さんは大勢のお客さんが改札を通過する中で、真子を大分前から"特別なお客様"として見てくれていたなんて、素敵な話よね』

『それって一歩間違えると、ストーカーと同じ心理になりそうだけどね』
『ロマンなさすぎ』

「確かに、ストーカーと同じになりそうだけど、私達だって、普段は駅員さんのことはそんなに気に留めずに通り過ぎているわけじゃない?だから私が"特別なお客様"として見てくれていたのと同じように私は彼を"特別な駅員"として見るようになってから、発展していったの」

それがお互いが"特別な愛する人"となって、それが実った。

「結婚は、紙切れ1枚の契約のようなものだろうけど、やっぱり特別な人になるには究極の手形だと思う。まだ結婚式を挙げていない今でも、少し安心して彼を見られるって言うか、"旦那さま"という箔がついてより一層、カッコよくなったと言うか・・・」
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