Special to me
スーパーで夕飯の食材を帰りに買い、社宅のエントランスに入ろうとした時、踊り場の奥に人影が見えた。

恐る恐る2人で近づいて、その正体は・・・

「千尋さん!」

座りこんで、苦痛に顔を歪めている。

『陣痛、始まったんですか?』

頷くだけの千尋さん。

『真子、とりあえずこの荷物を全部うちに運んで、うちから何枚かバスタオル持って降りてきて。千尋さん病院に連れて行くから』
「は、はい」

私は晃樹の言うとおり、家に帰って何枚かバスタオルを持って再び降りてくると、千尋さんはとりあえず落ち着いていた。

『陣痛が5分に1回になっている。真子、次に曽我さんの家に行って千尋さんの私物がまとまっていると思うバッグを持って来い』

千尋さんから鍵を受け取ると、私は一目散にバッグを取りに行った。

玄関先に全て用意されていた。

その間に病院には千尋さんが自分で電話をしたようだ。

「持ってきたよ」
『よし、行こう。真子、車の鍵を開けてくれ。俺は千尋さんを抱える』

そう言うと晃樹は、千尋さんをお姫様抱っこにした。

妊婦だから、相当体重はあるはずなのに、持ち上げられる晃樹は、気が優しくて力持ちなんだな、と改めて思った。

いやいや、今はそんな余裕はない。
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