Special to me
車にバスタオルを敷いて、千尋さんを座らせる。

私もその隣に座った。

晃樹は急いで発車をする。

「曽我さんには連絡した?」
『まだだけど、どこかでしないとな』

『ヤスには連絡しないで』

陣痛で息が整わない中、千尋さんが力のない声を出す。

『今は人身事故で現場対応中のはずなの。そちらの対応をして、電車の早い運転再開に努める方が先。私なら、病院に行ってしまえば何とかなるから・・・陣痛は病気じゃないんだし』

千尋さんによれば、予定日はちょうど1週間先。

海外にいるご両親のうち、お母さんがそれに合わせて帰国する予定でいた。

曽我さんのご両親はお父さんは元気だけど、お母さんは病気で長期入院中。

『私のお母さん、今頃飛行機の中だと思う』

痛みの中、千尋さんはそんな事情を話してくれた。

『とはいえ、頃合いを見て、俺が駅に電話するよ』
『くれぐれも、駅にご迷惑だけは掛けないようにお願い』
『わかりました』
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