Special to me
私も、千尋さんと立場は同じ。

もし、私が出産するとして、晃樹がいないとなった時、私は果たして1人でも頑張れるのだろうか。

晃樹を見ると、千尋さんのセリフに、下を向いて口を強く結んでいた。

その後、夕方になって曽我さんが来た。

『ありがとう。君達に何と礼を言えばいいか』
『駅は大丈夫なんですか?』

この時間はまだ曽我さんは勤務中のはず。

『ああ、応援の助役が来てくれたんだ。駅長が手配してくれてね。しかもお詫びされたよ。"立ち会わせることが出来なくて済まない"って。でも仕方ないよね。人身事故じゃ』

そう言うと、曽我さんはベッドにいる千尋さんの傍らで、千尋さんの目線に合わせるためにその場でしゃがんだ。

『お疲れ様。今聞いてきたよ。男の子だって』
『うん。来てくれて、ありがとう』

そう言うと、千尋さんの目から涙が零れてきた。

『米原さん夫婦に助けていただいて、無事に出産出来たんだけど、やっぱりヤスが来ると、安心する』

曽我さんは千尋さんの頬に伝う涙を、自分の親指で拭ってあげていた。

何か、その2人から漂う空気が、私にはすごく羨ましく思えた。
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