Special to me
『いいんです。貴方はスッピンが似合っています。メイクなんて女性が化ける道具に過ぎない。僕の前で化けて欲しくないですからね』

「牛もダメ、化けてもダメ、ですね」

"アハハハ"と笑った私達。

でも、その後、会話が続かない。

『あの』
「あの」

『どうぞ』
「どうぞ」

と譲り合う私達。

『これでは、会話が成立しませんよ。貴方から話してください』

「ごめんなさい・・・まず、私には名前があります。"貴方"じゃありません。真子です」

『そうでしたね。でも宇都宮さんって呼びにくくないですか?ですから、真子ちゃんでいいですか?』
「ぜひ!」

『じゃ、真子ちゃん』

そう言って半袖の白いシャツにカーキ色のカーゴパンツを履いたラフな米原さんは私を見て微笑んだ。

『真子ちゃんは、今はどんなお仕事をしてるの?』

"真子ちゃん"と呼ばれるだけで、私はドキドキする。

普段、同期たちからは"ウツ"だから。

「あの、米原さんは、"龍成社"という会社をご存知ですか?」
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