Special to me
電車が動き出した。

千尋さんの言う通りだ。

車掌の晃樹はよりカッコいい。
何度でも見に行きたいと思った。

車内アナウンスは基本的に自動音声。

しかしそれが終わったら、肉声に切り替わった。

"この電車の担当車掌は、菅原車掌乗務区、米原です。途中の菅原駅まで乗務いたします。菅原駅には18時47分、終点の山の上町駅には19時45分の到着を予定いたしております。次は、青池に停まります"

こんなに車掌の仕事を気にして電車に乗ったのは初めて。

電車は菅原駅に到着し、晃樹は乗務を交代するはずなので、私もここで下車した。

上り電車に乗り換えようと思って、一度階段に向かう私。

すると後から、

『ま~こ』

と声がした。

振り返らなくても分かる、愛しい人の声。

「晃樹、話しかけても大丈夫なの?」
『問題ないよ。このホームの一番下り側にある乗務区の入り口までに寄り道しなければね』

私は、そんな晃樹の姿を見ながら歩いていた。

『何か、強い視線を感じた。今も、乗務していた時も』
「千尋さんの言うことは、正解だったな。やっぱり晃樹の制服姿はカッコいい」
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