Special to me
『うん。出版社の?』

やっぱり、うちの会社って有名なんだね。

「そこで、社長の秘書をやっています」

『秘書?カッコいいね。でも秘書って休日にゴルフバッグを持って出掛けなきゃならないの?』

あれ?

米原さんから敬語が抜けている。
でもそれでいいと思ったのでそのまま会話を続行。

「あれは、特別です。休日出勤扱いになりましたし。いつも付き合わされていたら、パワハラで社長を訴えてます」

『アハハハ。そりゃそうだよね。でも、秘書の仕事って、希望通りなの?』
「いえ、全く」

私は秘書の勉強なんて、それまでしたことがなかった。

『そうだよな。出版社に入るのに、秘書希望なんてあり得ないよね。編集者になりたかったとか』
「はい、おっしゃる通りです」

それでも、今は秘書の仕事に誇りを持ってるけどね。

『夢って、思うように行かないよね』

「米原さんの夢って、何ですか?」

『僕?特にないなぁ。何かになりたいという夢を小さい頃から持ってなかった』

夢がない?
それって寂しいね。

「あの、米原さんっておいくつなんですか?」

すると、"あ、そうか"と米原さんは笑った。
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