Special to me
しかし、米原さんは気がついてしまった。

だから父親からはこう言われた。

―『娘が撒いた種ですが、娘を傷つけたことに変わりはありません。親の立場として言わせていただく。この家の敷居を跨がないことはもちろん、娘と会うことも、今後一切ご遠慮願いたい』―

そうやって彼女とはそれから会うこともなく別れたのは2年前。

元々構内のパン屋も辞めており、会うこともなかったが、風の噂で遠方へ引っ越したと聞いた。

『俺は、今は彼女なんていない。だからこうやってせっかくの明けの時間を過ごしてくれる人なんていないよ。だから、今日はありがとう、真子ちゃん』

「いえいえ、私も彼氏ナシですから、お互い様です」

私は自分の顔の前で手をヒラヒラさせて否定した。

『ふぅん。真子ちゃんみたいな可憐な女の子なら、男の子も放っておかないと思うんだけどな』

「そんな・・・可憐だなんて。私は割と性格がサバサバしているせいで、男慣れしていると勘違いされるか、女の子扱いをされなくて、付き合っても、すぐ浮気されちゃうし」

私は大した恋愛経験がない。

合コンして余りものどうしで惰性で付き合って、そこに愛なんてあるわけない。
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