Special to me
車を走らせること1時間ちょっと。

日曜日のトゥモローパラダイスは混雑していた。

時間は午前10時。

入場するも、結構な人の数。

おまけに水族館は通路が薄暗い。

しかも、彼女は夢中になって魚たちを眺めるので、周りへの注意が足りなくなっていた。

そのせいで・・・

途中の段差に気付かず、思いっきり彼女は転んだ。

『痛い・・・』

床のじゅうたんの摩擦で膝と肘に擦り傷を作ってしまった彼女。
血が噴き出す程ではなかったけど・・・

人の混雑は相変わらず。

俺はたまらず彼女に言った。

「真子ちゃん、俺のそばから離れないように、手を繋ごう」

その提案に真子ちゃんは丸い目をさらに丸くしたけど。すぐに俯いて、

『はい・・・』

と恥ずかしそうに小さい声で返事をした。

俺は強引に彼女の左手を握ると、次のペンギンの水槽へと向かった。

彼女の手はすごく小さくて柔らかい。

"女の子扱いされない"とか彼女は言っていたけど、どこがだよ。

この感触、どう考えたって女の子の手じゃねーか。

そして手を離さないまま、水族館を出た。
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