Special to me
『傘を貸していただいた後から、ずっと、米原さんのことを見ていました。ワンマンとホームで。米原さんがお仕事をしている姿を見るのが、元気の源で。その日の仕事へのテンションが違ってきます。米原さんが見られた日と見られなかった日の差が激しいみたいで、社長にも突っ込まれてしまっているくらいです』

"フフフ"と彼女は笑った。

「ホームでは、全然、気がつかなかった」
『それはそうですよ。ホームでは安全をきちんと確認しなければいけませんから、私を見るなんてあってはならないことです』

"ですから"と、彼女は続ける。

『昨日頂いたシフト表。私には宝物です。だって、米原さんがいるかいないかが先に分かるわけですよね』

と、彼女は嬉しそうな顔をする。

「真子ちゃん」

俺も彼女に合わせて自分のもう1つの手を重ねた。

「俺・・・8年半前に真子ちゃんに会ってから、ずっと君の姿を見届け続けてきた。そしてこうやって手を触れることができるようになって、まるで夢のようだよ」

俺は、溢れる想いを、もう止めることができなかった。
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