Special to me
『申し訳ありません。出過ぎたことを申しました。そのゴルフバッグ、重そうなので、エスカレーターかエレベーターをお使いくださいね』

「はい」

他のお客さんもいたし、私は足早に階段を昇ってホームに向かった。

ゴルフは好きだけど・・・接待ゴルフはイヤだなぁ。

私はただの秘書じゃない。
何でゴルフまでお付き合いしなきゃならないのよ。

こんなのパワハラだよ。

あぁ、これだったら入社前の希望部署で「編集がやりたい、営業がイヤ」と言わなきゃ良かったなぁ。

同期の玲奈や桐生や花村は営業でバリバリやっているのを見ると、営業がイヤなんて言わなきゃ良かったと思う。

どうせ編集部に配属されること自体が狭き門。
私みたいな能なしが行けるわけがない雲の上の職種なんだろうしさ。

社長たちが楽しそうにゴルフをやっている中、私はすっかり腐っていた。

けど、その後に思い出されたのが、駅員さん・・・米原さんの笑顔。

何で今まで気がつかなかったのだろう。

向こうは私に気付いていた。

今日は土曜日。
月曜日から、彼の笑顔を見るのが楽しみになった。

そして楽しみな月曜日。

私はいつもこの駅から出る8時28分の上り電車に乗る。

"ワンマン"を見たら、別の駅員さんがいた。

米原さん、いないのか・・・残念。

これから、毎日こんなことを考えるようになるのかな。
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