Special to me
でも、そこで何かすればいいものを、私はボーっと待っていただけ。

他人の部屋を汚してはいけない。
物を勝手に見たり使ったりしてはいけない。
そんな遠慮も私の中にはあるのかも知れない。

だから私はその遠慮から鍵を開けず、インターフォンを押した。

『勝手に入ってきても良かったのに・・・いや、やっぱり俺が出迎えたいかな。お帰り、お疲れ様、真子』
「ただいま」

と、最近では珍しくなくなった"お帰り""ただいま"の挨拶。

『お風呂沸いているから、入ってきな』

まるで夫婦。
しかも男女逆転。

最近、こんな生活が続いていて、ちょっと遠くなるけどここから会社に行くことも珍しくない。
さすがにごまかせなくなり、晃樹の存在を両親に話した。

お父さんは言葉なく、残念そうな顔をした。

お母さんは"真子は彼氏を作ることに興味がないと思っていたから、少ないチャンスをモノにしなさいよ"と言ってくれた。

『今日はちゃんと親に話してきたの?』
「うん。今日は私の誕生日を祝ってもらうからそのまま泊まるって」
『今度、真子の家に行くよ。さすがにけじめつけないと』
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