Special to me
「大丈夫?」

私は結婚直前まで行った前の彼女の親に挨拶に行った苦い思い出がぶり返してしまうのでは、と心配した。

『あの時とは訳が違うよ』

私の心配したポイントをすぐに理解した晃樹は棚からお皿を取り出しながら話した。

『あの時は、運命を全く感じない女性の親と会う"苦痛"。一方で、真子の親と会うのは、運命をものっすごく感じている女性の親と会う"緊張"だから』

"さ、お風呂に入りなさい"と強制的に脱衣場に閉じ込められた。

湯船に浸かった。

私はいつもそうだ。
晃樹のためにこれまでに何かしてあげただろうか?

ごはんを作ったことがない。
掃除や洗濯だってしたことがない。

仕事のこと・・・私は鉄道のことは分からないので役に立てない。
ただただ、横に座っているだけ。

これじゃ、誰が彼女でも一緒じゃない。
こんな私のどこがいいのよ。
甘えてしまって本当にいいの?

ここのところ、自己嫌悪に陥ることが増えた。
考え事していたら、すっかり長風呂になってしまったらしく、ドアをノックされた。

『おーい、逆上せるぞ』
「はーい」

私は急いでお風呂を出た。
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