Special to me
『大丈夫大丈夫。井上さんは社長の娘婿だから』
『宇都宮さん、声が大きいですよ』
『あ、ごめんなさい』

もう、俺には何が何だかさっぱりだった。
最早、異次元の世界にでも迷い込んだ気分。

赤ワインのボトルを頼んで、確かにお酒も料理も美味しかったけど・・・俺は緊張と場違いな空気が邪魔をして楽しめたとは言えなかった。

ひとつ下の階の部屋が用意されているみたいで、部屋番号頼りに探し当て、真子がキーを差しこんで入室する。

すると、そこには見たこともない部屋数と調度品の数々が置かれた豪華な部屋が広がっていた。

『これって、もしかして、スイートルームってやつ?』

「真子が分からなければ、俺に分かる訳がないだろ?」

お風呂も大きいし、ベッドはどんだけあるんだよ。

"せっかくだから、お風呂入ろうよ"と言う真子のはしゃぎ方に、窮屈な思いだった俺の心は大分溶かされたけどね。

ゆっくりお風呂に浸かる。
でもお酒を飲んでいるから、あまり長風呂はできないな。

それは真子も分かっていたらしく、カラスの行水のようにすぐにお風呂を出た。

バスローブを着て、ソファーに座る俺達は、レストランですっかり忘れていたプレゼント交換をする。
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