Special to me
「じゃ、そんな街の人たちに、俺たちの愛し合っている姿を見せてやろうよ」

俺はそう言うと、裸の真子をカーテンのない窓に向けたまま、後ろから体を繋げた。

『キャ、ダメ、見られちゃう』
「ここは何階だと思っているんだ?」

ここは40階。

周りに高い建物もない。

でも、そんな反応も可愛くて、つい、意地悪してしまうんだ。
俺だって、こんなに女性を抱き続けることができるなんて知らなかった。

だって、気付いた時には・・・窓の外の空が、すっかり明るくなっていたから。

『晃樹ってさ』

すっかり力が入らなくなっている真子が、俺に腕枕されながら話す。

『やっぱり、胸板厚いよね』

「死んだ親父が、柔道家だったんだよ。自営で内装工事の仕事しながら、道場開いてた。だから姉と俺は、そこで稽古していたんだ」

『男の子は晃樹だけだったんでしょ?後を継ぐとか、考えなかったの?』
「それは、環境的に無理だった」

親父は元々大酒飲みで、暴れるようなことはなかったけど、量は毎日かなり飲んでいた。

そこに、バブル崩壊で仕事の受注が取れなくなり、毎日自宅待機な毎日。

道場の生徒はある程度いたけど、それでは生活が成り立たない。
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