Special to me
『お兄ちゃん、電車のお仕事してるの?』

さっき晃樹が自己紹介した時、カン兄ちゃんが説明してあげたのかな。

小学校2年生にはまだ大人の言葉を完璧に理解するのは難しいだろうし。

晃樹は座っていて、朝陽は立っているけど、目線はちょうどいい。

『そうだよ。朝陽くんは電車が好きなの?』

晃樹は穏やかに朝陽と話す。

『うん。僕、運転士になりたいんだ』
『そうか。なれるように朝陽くんのこと応援しているよ』
『ありがとう!』

"あ、そうだ"と、晃樹は財布から何かを取りだした。

『これ、あげる』

朝陽に渡したのは、電車のシール。

私も利用しているおなじみの電車の先頭部分がアップで写されたもの。

『やったぁ!ありがとう!』

そう言うと、カン兄ちゃんの奥さんと、他の甥っ子姪っ子と一緒に隣の部屋に遊びに行ってしまった。

残ったのは父母、私達兄妹、下のお兄ちゃんの純(ジュン)兄とその奥さん、そして晃樹。

『晃樹くん』

会話の口火を切ったのはお父さんだった。

『娘を見初めてくれて、ありがとう』
『いえ、こちらこそ、僕の自宅に何度も泊めるなんてルール違反なことをしてしまって、申し訳ございません』
『そう考えるなら、真子との将来を、考えてくれていると捉えていいのかな?』
『それは・・・』

晃樹はひと呼吸置いた。
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