Special to me
すると、その言葉に反応したのは、意外にもジュン兄だった。

『親父、それは言い過ぎだぞ。晃樹さんだって、考えあってのことだ。真子だって物じゃないわけだから、自分の娘の意思は尊重しないと』

"それに"と、普段は口数の決して多くないはずのジュン兄は続けた。

『夜勤明けは、結構辛いんだ。規則正しいサラリーマン生活しか経験のない親父には分からないよ』

お父さんはジュン兄を一瞥した後、私を見た。

『真子、今日はこれからどうする予定だ?』
『僕の実家に行く予定です』

私の代わりに晃樹が答えた。

でも、私は最早、そんな気が起らなかった。

「・・・晃樹の実家へは行かない」
『真子?』

晃樹は隣に座る私を見た。

「私に対して、中途半端な思いの人の実家になんて、行きたくない!」

そう言って私はダイニングを飛び出し、自分の部屋に閉じこもった。

そして、ベッドに突っ伏して、ただ悲しくて泣き喚いた。

晃樹の心が見えなくて。
明日は目が腫れるだろうな。

久しぶりに体の水分がなくなるのではないかと言うくらい、泣いた。
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