ウェディングドレスと6月の雨
 カチャリ……。助手席のドアを開ける。隙間からはアスファルトが見えた。


「それと」
「はい」
「また週末、つき合ってくれないか?」
「え……」


 思わず顔を上げて運転席の穂積さんを見た。穂積さんは俯き加減でハンドルを見つめ、手は前髪をかき上げていて。


「行きたいレジャースポットがあるんだ。営業トークのネタに一度行きたいんだけど、さすがに男一人で行くのは。遊園地なんだけど……」


 突然のお誘いに私の心臓は高鳴る。穂積さんが顔を私の方に向ける。真っ直ぐな視線に射抜かれて。返事をしたいのに口が動かない。


「嫌か……?」


 穂積さんは少し首を傾げて私の顔を覗き込む。


「……いえ。行きたいです。遊園地なんてしばらく行ってないから」
「助かる。後で連絡する」
「はいっ」


 私が元気良く返事をすると穂積さんは安心したのか、にっこりとした。


「じゃあ、また」
「はい」


 私は車を降りて穂積さんを見送った。






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