ウェディングドレスと6月の雨

「穂積さんと旦那さんじゃ、旦那に軍配が上がったってことよね。同期が言うにはほんとに幸せそうな顔してたって。優しいお母さんの表情だったって」
「そうですか」
「だから見切りをつけたんじゃないかって」
「誰が何の、ですか?」
「穂積さんが神辺さんの。もう自分には見込みがないから成瀬さんにちょっかいを出してるんじゃないかって。穂積さんに新しい女の噂も立てば、神辺さんとの噂も消えるしね。まあ、噂の上書き? 利用されてるんだからあんまり入れ込まない方がいいわよ、成瀬さん」
「そうですね……」


 私は手元のコーヒーを見つめた。小さな水面には自分の瞳が映っていた。噂の上書き……先輩の言葉にショックを受けてる自分。私は穂積さんの道具でしかないって。

 今までだってそうだ。穂積さんは彼女を忘れたくて私とデートした。週末、ひとりになると考えてしまうから私を誘った。出産した日のランチだって。気を紛らわせたくて私を誘ったんだから。分かっていた癖に他人から指摘されると落ち込む。

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