ウェディングドレスと6月の雨
 ふわあっと浮いていた体に今度は重力が掛かる。穂積さんは手すりを握ってその加速度に耐えていた。私も身を屈めて力を入れる。すると今度は右に傾きながら坂を下っていく。再び上昇し、今度は左へ。

 そしてとうとうクライマックス。連続2回転。


「きゃあ!」
「……」


 くるくると景色は天地を変えていく。そしてスピードを下げて、スタート地点に戻った。


「結構すごかったですね」
「……」
「穂積さん?」


 返事をしない穂積さんを見ると、顔面蒼白……。とりあえずジェットコースターを降りて出口の階段へ向かう。ひょっとして、ひょっとして……。遊園地に来て、スカイサイクルとトロッコバスを選んだのは絶叫系を避けていたから? フライングカーペットやジェットコースターの乗り位置を聞いてきたのも……。


「穂積さん、乗り物、苦手なんですか?」
「……ああ」


 階段を下りきったところで穂積さんは髪をかきあげた。いつもの仕草。


「なら。言ってくれれば」
「そんなの言えねえだろ」
「そんなことないです。可愛いじゃないですか」
「……」


 穂積さんはギロリと私を睨んだ。

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