ウェディングドレスと6月の雨

 ふと外を見ると湖。白鳥のボートや手漕ぎのボートがいくつか浮かんでいた。その脇にはゴーカート。お冷やを汲んで席に戻る。


「自分で運転するものなら大丈夫なんですよね?」
「ああ」
「ボートに乗りたいです。オールで漕ぐボート。あとゴーカート。ほら」


 私は窓の外を指差した。


「なら、一人で乗ってこい」
「オール、漕いだことないんです」
「白鳥のならペダルだろ」
「あれだとボートに乗った気がしないんです」
「ゴーカートは」
「子どもの頃、アクセルとブレーキを踏み違えてコースアウトしたことがあって苦手なんです」


 穂積さんは再び髪をかきあげた。今度はグシャグシャっと。


「……分かった」
「ありがとうございます」

< 116 / 246 >

この作品をシェア

pagetop