ウェディングドレスと6月の雨
 そして両手を離すとボートは直に停まった。太陽の位置が真横になる。


「友達、ですか?」
「ああ。男か? 女か?」
「女友達ですけど……」
「……」


 穂積さんは黙って髪をかきあげる。その姿に西日が当たる。


「漕ぐか? 漕いだことないんだろ?」
「はい」
「横、来いよ」
「え?」
「教えてやるから。ほら」


 そう言って穂積さんは手をまっすぐに私に差し出した。


「はい……」


 その手に自分の右手を重ねて、穂積さんの手に自分を委ねる。そろりと立ち、中腰で動く。そして穂積さんの横に並んだ。


「きついか?」
「少し」


 小さなボート。隣り合う穂積さんと私は否が応でもくっつく。


「オールの持ち手を両手で握って。縁をテコの支点にして先を上げるんだ」
「はい。きゃっ!」


 穂先が水面から出た瞬間に勢いよく上がり、水しぶきがはねた。

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