ウェディングドレスと6月の雨
 穂積さんの乗った社用車を見送って改札を抜ける。初夏、明るめの服装の女子は多いけれど、真っ白な私の格好は少し目を引いた。入線した電車に乗り込む。とっくに日の暮れた車窓は暗く、流れ星のように街灯を飛ばしていく。

……その窓に映る自分の姿。まんざら嫌じゃなかった。

 ウェディングドレス。女性なら誰しも憧れる、それ。私は、このワンピースを見て、自分の花嫁姿を想像した。きっと、このワンピースは誰かが着るはずのもので、きっとその人も花嫁姿を想像したに違いない。


 いったい、何のための……そして誰のための……。




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