ウェディングドレスと6月の雨
「週末に穂積とシネコンにいるところを見たって社員が広報室にいてさ。本当なの?」
「ええ」
「そういう関係?」
「いえ。前回のコンペで私に手を掛けさせたって……。迷惑料みたいなものです」
「そうなんだ」
私は咄嗟に嘘をついた。高田さんは納得したように頷きながら、にっこりと笑う。
「穂積のことが好きってことじゃないんだね」
「……ええ」
「だよなあ。穂積、まだ神辺さんと続いてるって噂じゃん? 今回のコンペも本社からのお達しだし、神辺さんの入院してた産婦人科の近くをうろついてたっていう目撃情報もあるし」
「産婦人科?」
「そ。旦那の目を盗んで逢い引きしてたんじゃないのかって噂。お見舞いのフリして産婦人科に忍び込んだんだよ」
「それってソースは何処ですか」
「本社営業部。営業部の人だから間違いないよ。穂積はうちの支社に来る前に本社営業部にいたんだから」
私は手元のグラスを持ち、口元に寄せると一気にグラスを傾けた。ユラユラと踊る泡を一気に飲み込む。神辺さんと別れたなんて、穂積さんの演技だったんじゃないか、ただ火消しをしたいがために私にちょっかいを出したんじゃないか。毎週末私を誘うのも他の社員の目撃情報を誘発するためじゃないのか、って。
「ええ」
「そういう関係?」
「いえ。前回のコンペで私に手を掛けさせたって……。迷惑料みたいなものです」
「そうなんだ」
私は咄嗟に嘘をついた。高田さんは納得したように頷きながら、にっこりと笑う。
「穂積のことが好きってことじゃないんだね」
「……ええ」
「だよなあ。穂積、まだ神辺さんと続いてるって噂じゃん? 今回のコンペも本社からのお達しだし、神辺さんの入院してた産婦人科の近くをうろついてたっていう目撃情報もあるし」
「産婦人科?」
「そ。旦那の目を盗んで逢い引きしてたんじゃないのかって噂。お見舞いのフリして産婦人科に忍び込んだんだよ」
「それってソースは何処ですか」
「本社営業部。営業部の人だから間違いないよ。穂積はうちの支社に来る前に本社営業部にいたんだから」
私は手元のグラスを持ち、口元に寄せると一気にグラスを傾けた。ユラユラと踊る泡を一気に飲み込む。神辺さんと別れたなんて、穂積さんの演技だったんじゃないか、ただ火消しをしたいがために私にちょっかいを出したんじゃないか。毎週末私を誘うのも他の社員の目撃情報を誘発するためじゃないのか、って。