ウェディングドレスと6月の雨
 空になったグラスに高田さんはアスティを注ぐ。甘い口当たりに私は2杯目も一気に喉元に流し込んだ。


「どうしたの、成瀬さん」
「美味しいですね、これ」
「そう。飲んで。僕はこういう味は苦手なんだ」


 主菜のパスタが届いてフォークにぐるぐると巻き付ける。穂積さんと来たときもパスタを注文した。妙にハイテンションだった穂積さん、普段は話さない癖にお喋りで。あれは愛した女性が陣痛の最中で心配だった、とか、愛した女性が自分以外の男性の子を産もうとすることに抵抗があったんじゃなくて、自分の子かもしれないと危惧していたからだったかもしれない。それに私は付き合わされたんだと思った。


「どうしたの、成瀬さん。急に無口になって」


 関係ない。穂積さんと神辺さんが現在、付き合ってても付き合っていなくても。どっちにしたって、私の片思いは変わらないんだから。


「いえ」


 そう頭の中では理屈を付けようとするけど、このモヤモヤ感は何だろう。穂積さんが他の女性を想ってることに何をヤキモキしているんだろう……。ぐるぐるパスタを巻いては口に放り込む。喉を潤そうとアスティを飲み干す。デザートのケーキを選ぶのに立ち上がるとフラリとした。思わずテーブルに手を突く。飲み過ぎた。フルボトルのワインを半分は飲んでる。

< 128 / 246 >

この作品をシェア

pagetop