ウェディングドレスと6月の雨
 駅に着くころには足の感覚も戻った。高田さんは送ると言ってくれたけど、断ってひとりで帰宅した。

 次の週末はどうしよう。そろそろ穂積さんからお誘いのメールが来る。先週は遊園地だったから今度は室内だろう。ブラブラとウィンドウショッピングか美術館か、観劇とか。最近出来た激安居酒屋も女性だけでは入りにくいし、このところ散財したからそういう気取らないところもいい……。そんな計画を立てようとして私はため息をついた。穂積さんとのデートを考えて何になる。会ってどうしようというのだろうって。他の女性と逢い引きしている男の人を、私を利用してる人を見つめても仕方が無いのに。




*ー*ー*


 翌日。朝。二日酔いの通勤電車。吊革に捕まり車窓からの眩しい景色に目を細める。9月。まだ太陽の光は真夏の強さ。突如、電子音が頭に響いてキリキリする。自業自得……マナーモードにするのを忘れて、鞄からスマホを取り出した。


“今週末は都合が悪くなった。また連絡する”


 
 穂積さんからのメールが来た。その文字を見てガッカリする自分とホッとする自分がいた。とりあえず今週末は顔を合わせずにすむ。でも来週は穂積さんに会う。コンペの会議が始まるから。だから少し日延べになっただけ。


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