ウェディングドレスと6月の雨
 翌週の会議の日。午後、私は準備をしていた。資料を人数分印刷して綴じる。その資料には今回企画室に参加するメンバーのフルネームが印字されている。部長や製品部も、そして……営業部第一営業課、穂積孝宣。広報室、高田圭吾。総務部総務課、成瀬弥生。今日は初回、多分顔合わせをして終わる。穂積さんは遅刻してくる。そして会議のあともすぐに外回りに出るだろう。特に摺り合わせも無いから、会議中に穂積さんと目を会わせなければいいだけ。資料を閉じ終えてデスクの上でトントンと裾を揃えてモヤモヤした気持ちに覇気を付けた。

 その資料を持って会議室に移動する。ドアを開けるとむんわりした空気が廊下に流れ込む。テーブルに資料を置いてから照明をつける。エアコンをつける。給湯室でやかんに水を汲み火に掛ける。雑巾を絞る。

 すると背後で足音がした。穂積さんの筈はない、でも穂積さんだったらどうしようか、って。胸は鼓動で痛くなる。ときめいても何にもならないのに。

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