ウェディングドレスと6月の雨
その日の会議は順調に終了した。それぞれ自己紹介をし、分担内容を営業部長が口頭で振り分ける。今後の会議の日程を決め、次回までに他社の動向をリサーチして対策を練ることになった。
お開きになると、皆は初参加の社員たちと名刺交換を始める。皆がにこやかに談笑する中、穂積さんは自分の資料を片づけるとさっさと会議室を出て行った。穂積さんの手帳には今日もこのあとには得意先の会社名が記されていたから、急いでいた理由は分からなくはない。
ただ……誰にも挨拶もせずに黙って行ってしまった。もちろん、私にも。皆にもしなかったから私だけ無視された訳じゃないのだけれど、目も合わせてくれなかった。
皆が自分の持ち物をまとめて帰っていったあと、私はコーヒーカップをまとめ、給湯室で洗う。物音に振り返るけど、穂積さんはいなかった。
私は手帳が気になって仕方なかった。真っ白な日曜日の欄……頭から離れない。予定は無いのに私とは会わない。
私は何を考えてるんだろう。会えば会ったで利用されてると被害者ぶって、会わないなら会わないでさみしがるなんて。