ウェディングドレスと6月の雨

 帰宅して、私は白いワンピースを脱いだ。まだ着ていたい気持ちもあったけれど、罪悪感からそれを脱いだ。私が着るべきものではない……そう直感したから。ベッドの上に広げてそれを丁寧に畳んだ。そしてクシュクシュ感のあるマイバッグにそっと入れ、私はアパートを出た。

 駅前商店街のアーケード、もうシャッターの下りている店もある。夜7時。行きつけのクリーニング店に向かうとちょうどおじさんがシャッターを下ろしているところだった。


「あ、こんばんは。お願いしたいんですけど」
「はいよ」


 おじさんは笑顔で頷いた。

 半分下りたシャッターを屈んで店の中に入る。小さなクリーニング店。おじさんは小さなカウンターの中に入っていくと私のバッグからワンピースを取り出した。

 瞬間、店主のおじさんは、お?、と声を挙げた。


「あの……」
「これはこれは」


 そして服を手にするなり、眉をひそめる。高級な布地、お洒落なデザイン。裏側に付けられたタグを見て再び声を上げた。有名どころのタグ、どうやらオートクチュールらしい。おじさんは頬を緩めて嬉しそうにそのワンピースを眺めた。こんな代物は滅多に拝めない、って。なんだか私が褒められたみたいでくすぐったくなった。

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