ウェディングドレスと6月の雨
翌日、出勤すると顔をにやつかせた先輩がホットコーヒーを私に注いでくれた。その湯気に夏は終わったんだと感じたけれど、次の瞬間、その香ばしさは吹っ飛んだ。高田くんを振ったんだって?、いえ、穂積さんのせいで食事を断られてカンカンらしいよ?、だから振るも何も、穂積さんは高田くんの天敵だよねえ、そうでしょうか、私なら高田くんを選ぶわ不倫癖のある穂積さんじゃこの先不安だしね、そうでしょうか。
「成瀬さん、まだ穂積さんのこと信じてるの? あれは絶対、神辺さんとつながってる」
「……」
穂積さんは否定もしなかったし、飛び出した私を追いかけても来なかった。それは認めたということ。つまりは、神辺さんとまだ続いているという事実、そしてその火消し役に利用されたという事実。社内恋愛は片思いでも面倒。まだ部署が違うから顔は合わせなくて済む、唯一の救い。でも会議では顔を合わせるし、その前に会議報告をしないといけない。
昨日からずっと穂積さんの横顔が脳裏にチラチラして集中できない。焦燥感みたいなものに襲われっ放し。失恋確定なら忘れればいい。でも忘れたいのに忘れられない。それは都合よく利用されたから? ただ単に、穂積さんを手に入れられない惨めさから??
早く気持ちを整理して、会わなくちゃ……。
「成瀬くん」
オフィスの奥の席にいる総務課長に大声で呼ばれて私は立ち上がった。
「悪いんだが、これから出張を頼めないか? 本社に届けて欲しいものがある」
本社……。ここから電車で1時間ほど。気分転換にはいいかもしれない。
「はい」
「悪いな」
私は部長から書類の束が入った大きな封筒を受け取った。こういうのはFAXでは送りきれない大量の書類だったり、コピー厳禁の重要性の高い案件。新入社員には預けにくいものだったりする。入社4年目の私も少しは役に立ってるのかもしれない。
「成瀬さん、まだ穂積さんのこと信じてるの? あれは絶対、神辺さんとつながってる」
「……」
穂積さんは否定もしなかったし、飛び出した私を追いかけても来なかった。それは認めたということ。つまりは、神辺さんとまだ続いているという事実、そしてその火消し役に利用されたという事実。社内恋愛は片思いでも面倒。まだ部署が違うから顔は合わせなくて済む、唯一の救い。でも会議では顔を合わせるし、その前に会議報告をしないといけない。
昨日からずっと穂積さんの横顔が脳裏にチラチラして集中できない。焦燥感みたいなものに襲われっ放し。失恋確定なら忘れればいい。でも忘れたいのに忘れられない。それは都合よく利用されたから? ただ単に、穂積さんを手に入れられない惨めさから??
早く気持ちを整理して、会わなくちゃ……。
「成瀬くん」
オフィスの奥の席にいる総務課長に大声で呼ばれて私は立ち上がった。
「悪いんだが、これから出張を頼めないか? 本社に届けて欲しいものがある」
本社……。ここから電車で1時間ほど。気分転換にはいいかもしれない。
「はい」
「悪いな」
私は部長から書類の束が入った大きな封筒を受け取った。こういうのはFAXでは送りきれない大量の書類だったり、コピー厳禁の重要性の高い案件。新入社員には預けにくいものだったりする。入社4年目の私も少しは役に立ってるのかもしれない。