ウェディングドレスと6月の雨
「ちっちゃい……可愛い……」
抱いていて怖いのだけれど、ずっと見ていたい気持ちに駆られた。でもそんな訳にも行かず、私はそっと女性に返した。彼女は受け取るととんとんと毛布を軽く叩いて赤ちゃんをあやす。
長い髪は後ろで束ねられ、薄化粧した顔は清楚で、柔らかい笑顔とオーラは母親そのもので。きっと、この人が神辺さん……。歳は私より10以上離れてるっぽい。35歳くらい。落ち着いていて、でもどこか可愛らしい雰囲気を持ち合わせている。
……穂積さんが愛した人。
「あ、そろそろ帰らなきゃ。成瀬さん、お手伝いしてもらってもいい? そこにマザーズバッグがあるの」
「はい、これですか?」
「下の駐車場まで一緒に」
「はい」
私はマザーズバッグと自分の鞄を持ち、本社総務部のオフィスを出た……神辺さんと。神辺さんは赤ちゃんをあやしながら歩き、愛おしそうに見る。エレベーターで階下に降りて地下駐車場に向かった。
神辺さんは赤ちゃんを後部座席のチャイルドシートに乗せる。私は助手席にマザーズバッグを置いた。
「あ、バッグは後ろの座席に」
「はい」
私はバッグをチャイルドシートの隣に置き直した。
「じゃあ私はここで」
「ちょっと待って成瀬さん」
神辺さんは私の前に来ると、助手席のドアを開けた。
「お礼に送るわ」
抱いていて怖いのだけれど、ずっと見ていたい気持ちに駆られた。でもそんな訳にも行かず、私はそっと女性に返した。彼女は受け取るととんとんと毛布を軽く叩いて赤ちゃんをあやす。
長い髪は後ろで束ねられ、薄化粧した顔は清楚で、柔らかい笑顔とオーラは母親そのもので。きっと、この人が神辺さん……。歳は私より10以上離れてるっぽい。35歳くらい。落ち着いていて、でもどこか可愛らしい雰囲気を持ち合わせている。
……穂積さんが愛した人。
「あ、そろそろ帰らなきゃ。成瀬さん、お手伝いしてもらってもいい? そこにマザーズバッグがあるの」
「はい、これですか?」
「下の駐車場まで一緒に」
「はい」
私はマザーズバッグと自分の鞄を持ち、本社総務部のオフィスを出た……神辺さんと。神辺さんは赤ちゃんをあやしながら歩き、愛おしそうに見る。エレベーターで階下に降りて地下駐車場に向かった。
神辺さんは赤ちゃんを後部座席のチャイルドシートに乗せる。私は助手席にマザーズバッグを置いた。
「あ、バッグは後ろの座席に」
「はい」
私はバッグをチャイルドシートの隣に置き直した。
「じゃあ私はここで」
「ちょっと待って成瀬さん」
神辺さんは私の前に来ると、助手席のドアを開けた。
「お礼に送るわ」