ウェディングドレスと6月の雨
一応断ったけれど、結局は助手席に押し込まれて。車はゆっくりと坂を登って地上に出る。
「成瀬さんって、総務部なの?」
「はい。雑用ばかりの総務部総務課です」
「総務って大変よね。守備範囲が広いものね。じゃあ臨時企画室にも駆り出されてるの?」
「……はい。前回の企画室も今回も参加させていただいてます」
流れがコンペの話になる。神辺さんはそれを聞きたくて私を送ると言い出したんだろう。思いがけず出来た、穂積さんの想い人との対面。でも私はどうしていいか分からなかった。
不倫と聞いて、もっと、汚いものをイメージしてた。ご主人を蔑ろにして若い男をたぶらかす魔女とか娼婦とか、そんな黒い印象。でも隣にいる神辺さんは明るくて綺麗で……年上なのに可愛い。穂積さんが好きになるのも分からないではない。
「穂積くん、どう? 支社で頑張ってる?」
「……はい」
「そう」
「先日のコンペも無事勝ち取りましたし」
「良かった。穂積くんを推して良かった」
噂は本当だった。人事部の神辺さんの推薦……。
「成瀬さんって、総務部なの?」
「はい。雑用ばかりの総務部総務課です」
「総務って大変よね。守備範囲が広いものね。じゃあ臨時企画室にも駆り出されてるの?」
「……はい。前回の企画室も今回も参加させていただいてます」
流れがコンペの話になる。神辺さんはそれを聞きたくて私を送ると言い出したんだろう。思いがけず出来た、穂積さんの想い人との対面。でも私はどうしていいか分からなかった。
不倫と聞いて、もっと、汚いものをイメージしてた。ご主人を蔑ろにして若い男をたぶらかす魔女とか娼婦とか、そんな黒い印象。でも隣にいる神辺さんは明るくて綺麗で……年上なのに可愛い。穂積さんが好きになるのも分からないではない。
「穂積くん、どう? 支社で頑張ってる?」
「……はい」
「そう」
「先日のコンペも無事勝ち取りましたし」
「良かった。穂積くんを推して良かった」
噂は本当だった。人事部の神辺さんの推薦……。