ウェディングドレスと6月の雨
 雷の音も遠くなり、ほとんど聞こえなくなって穂積さんは立ち上がった。ずっと下を向いていた私も顔を上げる。穂積さんはキッチンに行き、コーヒーを注いだ。


「砂糖か」
「いえ、私、最近ブラックで。ここに泊めていただいたときに飲んだコーヒーが美味しかったから」
「薄めるか?」
「はい」


 さっきまで抱かれていた肩が熱い。出されたコーヒーカップを両手で持ち、啜る。告白しようと思って奮起して来たけれど、もうそんな雰囲気でもなくなっていた。雷で削がれたというか、失速してしまったというか、エネルギーを消費してしまった。

 穂積さんも向かいに座ってコーヒーを飲んでいる。


「アンタ」
「はい」
「何か……聞いてないか?」
「コンペですか?」
「いや。何でもない。それ飲んだら駅まで送る」


 雷が去って私も穂積さんも落ち着いたけれど、どこか穂積さんの挙動不審な感じは残っていた。








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