ウェディングドレスと6月の雨
 日曜日。アパートの前で待っていると、車が停まる。穂積さんだ。


「おはようございます」
「おはよう。乗って」


 ジーンズにパーカーという格好の穂積さんは運転席で少し怖い顔をしていた。朝6時、早い時間。寝起きで機嫌が悪いのだと思った。それか、私は何かしてしまったかと記憶を探る。


「あの……」
「何」
「何でもありません」


 そう答えるとクスクスという笑い声が聞こえた。


「成瀬は面白いな」
「別に笑わせようとしてませんけど」
「じゃあ、天然か」
「もう……」


 またクスクスという笑い声が聞こえる。それに私は安堵感した。だって、穂積さんが不機嫌そうなのは私のせいじゃないって分かったから。


「どうしたんだ?」
「穂積さん、疲れてるのかなと思って」
「なんで」
「ちょっと不機嫌そうだから」
「不機嫌?」
「怖い顔してましたけど」
「そうか。元々こういう顔だから」


 穂積さんはまた笑う。


「あの」
「怖くて悪い」
「いえ」
「今日はいろいろと……な」
「いろいろ?」


 穂積さんはそのあとは黙ってハンドルを握っていた。

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