ウェディングドレスと6月の雨
「迷惑か?」
私が黙ってるから、そんなことを言うのかもしれない。でも好きだと言われて、動転して、自分の唇が動かない。
私は首を横に振って答えた。
「迷惑そうだな」
「め、迷惑なんかじゃないです。迷惑だったらこんなところまで来ないです。あの、私……わ……あの、その」
穂積さんはクスクスと笑い出した。
「顔、真っ赤」
「だって……そんなこと言われたら、誰だって」
「ウブなんだな」
「しょ、しょうがないじゃないですか。えっ……?」
突如、暗くなる視界。何かで塞がれた唇。温かくて、ふわりとして。顎には何かが触れて上を向かされて。それがキスだと気付くのに時間は掛からなくて。
一度、穂積さんの唇は離れた。
「穂積さ……」
「喋るな」
再び重なる唇。今度は向きを変えて。そっと触れては離れ、離れては触れる。優しいキス。何度も何度も、打ち寄せる波のように繰り返された。