ウェディングドレスと6月の雨
 そしてそれを右手で鷲掴みにすると、腕を振り上げた。そして振り下ろすと同時に手のひらを広げる。


「あ……」


 ワンピースは風に踊りながら、放物線を描いて水面に落ちた。


「不法投棄です、穂積さん」
「そうか。じゃあ拾いに行く」


 そう言って更に一歩進む穂積さんの腕を掴んだ。


「穂積さん、危ないですからやめてください」
「分かった。じゃあ共犯だな」
「もう……」


 穂積さんはまたクスクスと笑う。私は掴んだ腕を離した。


「この海で神辺さんと出会ったから、この海に返したかった」


 遠くでユラユラとワンピースは揺れている。穂積さんと2人で無言でそれを見つめていた。どのくらいしただろう、しばらくしてその姿はみえなくなった。










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