ウェディングドレスと6月の雨
 穂積さんの声を聞いて胸がきゅんとする。そしてすぐに緊張に変わる。部屋に上げる訳じゃないけれど、私の部屋を覗かれるから。カチャリと金具の回る音、キイと金具の軋む音、そして現れたのは穂積さん。


「おはよう」
「……おはようございます」


 スニーカーを履き終えて立ち上がった。穂積さんは先週買ったばかりのお揃いのトレーナーとジーンズ。そして私の後ろをキョロキョロと見ている。


「や、あの……」
「荷物、こんなに?」


 穂積さんが見ていたのは部屋ではなく、散らかった荷物たち。


「はい……。あの、お弁当作って」
「作ったのか」


 穂積さんは大きな手を顎に当てて擦って。困った用な顔をして。


「迷惑……でしたか?」
「いや。行こうか」
「はい」


 穂積さんは片っ端から荷物を拾い上げて片手に持つ。バスケット、ポット、ミニトート、レジャーシートの入ったバッグ。私は鞄を持つと外に出てドアに鍵を掛けた。穂積さんは軽々と荷物をはじめとする持って通路を歩いていく。

 路肩に停めてあった穂積さんの車に荷物を積み込み、出発する。近場の大きな池のある公園。

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