ウェディングドレスと6月の雨
 駐車場にはスムーズに停められて、車を降りると私たちは公園を散策した。雑木林の歩道を2人で歩く。紅葉にはまだ早いけれど、ナナカマドは少し赤みを帯びているものもあった。桜も葉を落とし始めていて秋む向かっているのは目に見えて。木洩れ日が爽やかで。もちろん、私たちの他にも散歩をしてる人はいた。年配ののご夫婦、家族連れ、ウォーキングをする女性、ジョギングをする男性。色んな人達とすれ違う。


「気持ちいいですね」
「ああ。いつもコンクリートジャングルばかりを歩いてるからな」
「穂積さんの顧客って」
「ビジネス街が多いな。電車で移動して近いところは歩いて回って。駅から遠いときや部品の取り替えは社用車を使うけど。成瀬は?」
「総務は缶詰めです、自社ビルに」
「そうか。息が詰まるだろ」
「はじめはそうでしたけど、今は慣れました。逆に出張すると神経すり減ります」
「コンペもか?」
「ええ」
「成瀬は動じないタイプにみえるけどな」


 穂積さんはクスクスと笑う。


「もう。私も緊張ぐらいします」
「そういうことにしておく」


< 199 / 246 >

この作品をシェア

pagetop