ウェディングドレスと6月の雨
 5分程歩いて池の見えるところに出た。


「ここでいいか?」
「はい」


 穂積さんは荷物を下ろすと、レジャーシートを見つけて広げた。私はそこにバスケットやポット、紙皿を並べる。


「何を作ったんだ? 緊張するくらいに」
「サンドイッチです。普段はお弁当箱にご飯を詰めちゃうから慣れなくて」


 私はそう答えてバスケットからサンドイッチを詰めた箱を取り出す。蓋を開けて穂積さんに見せた。


「本当に慣れてなくて、詰めるのも何度も詰め直して、だから崩れて……」


 緊張して穂積さんの顔を見れない。俯いてレジャーシートを見つめたまま、穂積さんの言葉を待つ。


「……綺麗だな」
「え?」
「美味そうに出来てる」
「本当ですか?」


 私はミニトートからおしぼりを出して穂積さんに手渡した。穂積さんは手を拭くと、卵のサンドイッチに手を伸ばす。そして蒸し鶏のもベーコンのも。



「ほら、成瀬も食べろよ。腹減ってるんだろ」
「はい……」


 でも胸がいっぱいで手を伸ばす気には慣れなくて。カップにコーンスープの素とお湯を注いで穂積さんに差し出す。



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