ウェディングドレスと6月の雨
穂積さんは再び卵のサンドイッチに手を伸ばす。
「穂積さん、それ、好きですか?」
「あ……ああ」
「じゃあ、いっぱい作ってくれば良かった」
「ほら、成瀬も」
「はい」
私はようやく緊張していた心も落ち着いて、サンドイッチを食べて。2人で食べてあっという間に残りひとつになって。
「ベーコンの、食べませんか?」
「いや。いい」
「じゃあ、食べちゃいますね」
最後のサンドイッチを食べて完食した。紙コップにインスタントコーヒーを入れて、穂積さんに出す。
「お口に合いました?」
「ああ」
「じゃあまた、作りますね」
「いや、成瀬」
穂積さんの顔が少し曇る。穂積さん……?
「あの、もしかして、お口に合いませんでしたか?」
「そうじゃないんだけど、俺」
「はい」
「……カラシが苦手で」
「カラシ……。あ」
そう言えば穂積さんは卵サンドイッチばかりを……。
「あ、すみません、私」
「いや、食べられない訳じゃないんだ。粒マスタードなら平気なんだけど、洋ガラシは味が苦手で……悪い」
「いえ、いいんです。私が勝手に」
「いや……」
「……」
2人で沈黙する。穂積さんは気まずいのか、紙コップのコーヒーを啜った。