ウェディングドレスと6月の雨
 アパートまで送ってもらう。車の中はお互いに口数は少なくて。さっきのキスがどうにも頭から離れない。少し……熱いキス。


「ありがとうございました」
「いや。荷物、部屋まで運ぶ」
「大丈夫です。軽くなったし」
「遠慮するな」


 穂積さんはハザードランプを点滅灯させてエンジンを切ると運転席を降りた。そして後部座席からバスケットやバッグを取る。


「すみません」


 そして私は外付けの階段を上がる。後ろから穂積さんが付いて来る。鞄から鍵を取り出し、開錠した。ドアを開ける。穂積さんは中に入り、玄関に荷物を置いた。背後でガチャリとドアが閉まる。狭い玄関に2人。


「すみません」
「いや」


 穂積さんは振り返ると、私の両肩に手を置いてキスをする。さよならのキス。名残惜しい。

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