ウェディングドレスと6月の雨
 もっともっと、一緒にいたい……。


「あの……」
「なんだ」
「上がってお茶でも……」


 私は咄嗟に言葉にしていた。あと30分だけでもいい、そばにいたいって。上目遣いで穂積さんを見上げてた。

 穂積さんはちらりと私の部屋を見た。


「いや……帰る」


 肩に置いていた手を離して、自分の髪をかきあげた。


「これから得意先に行かなきゃならないんだ。悪い」
「いえ。大変ですね。ごめんなさい、引き留めて」
「じゃあ、また。来週もいいか?」
「はい」


 穂積さんは手を挙げるとドアを開けて出て行った。












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