ウェディングドレスと6月の雨
 私は夜になって、一度メールをした。23時、お風呂も入ってもうパジャマを着てベッドに潜り込んでいる。


“今日はありがとうございました、そしてごめんなさい”


 文面を悩んで悩んで、こんな時間になったんじゃない。本当は早めに送りたかったけど、仕事だと言ってたし、寝る前にさらっともらうメールの方が穂積さんに負担がない気がして。だからくどくどと、カラシごめんなさい、とか、忙しいのにありがとう、とか書かなかった。


“いや。うまかった。また頼む。おやすみ”


 返信のところをタップして、おやすみなさいと入れようとして。


「“おやす……”」


 途中で止めた。ウザいって思われたら嫌だって。気にし過ぎかもしれない。でも穂積さんも疲れてるだろうし、私ももう空回りしたくない気持ちでいて。私はスマホを枕元に置いて部屋の明かりを消した。早く寝よう……こんな日はねちゃうに限る。白鳥ボートのペダルを必死に漕いだのと早朝から起きていてのとで、私はすぐに眠りについた。

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