ウェディングドレスと6月の雨

 私は鞄をデスクに置いて耳をダンボにした。


「自宅に?」
「そ。わざわざ休日に行かなくてもねえ。宣戦布告みたいなもんだろうけど」


 穂積さんが言ってた仕事って、高田さんのことだったんだろうか。でも得意先って、言ってた。


「穂積さんもわざわざ自宅で待ってたんですかね?」
「ううん。高田くんが突然押し掛けたみたいよ」


 突然……。と言うことは、高田さんとの約束はなかった。あのあと自宅に帰っていたということ? 得意先に行くっていうのは嘘だった、ってこと?? 混乱する。だって、嘘をついて穂積さんは帰っていった。お茶でもって誘ったのに断って自宅に帰ってたなんて。

 やっぱり疲れてたのか、と思った。来週も、って言ってたけど、穂積さんに悪い。鞄からスマホを取り出してメールする。



“おはようございます。すみません、週末都合が悪くなりました。”



 すれば返信はすぐに来て。



“残念。じゃあ再来週。”


「……」


 自分でキャンセルしておきながら、ため息をつく。再来週……2週間も会えないなんて。


< 212 / 246 >

この作品をシェア

pagetop