ウェディングドレスと6月の雨
私は鞄をデスクに置いて耳をダンボにした。
「自宅に?」
「そ。わざわざ休日に行かなくてもねえ。宣戦布告みたいなもんだろうけど」
穂積さんが言ってた仕事って、高田さんのことだったんだろうか。でも得意先って、言ってた。
「穂積さんもわざわざ自宅で待ってたんですかね?」
「ううん。高田くんが突然押し掛けたみたいよ」
突然……。と言うことは、高田さんとの約束はなかった。あのあと自宅に帰っていたということ? 得意先に行くっていうのは嘘だった、ってこと?? 混乱する。だって、嘘をついて穂積さんは帰っていった。お茶でもって誘ったのに断って自宅に帰ってたなんて。
やっぱり疲れてたのか、と思った。来週も、って言ってたけど、穂積さんに悪い。鞄からスマホを取り出してメールする。
“おはようございます。すみません、週末都合が悪くなりました。”
すれば返信はすぐに来て。
“残念。じゃあ再来週。”
「……」
自分でキャンセルしておきながら、ため息をつく。再来週……2週間も会えないなんて。