ウェディングドレスと6月の雨


“おはよう。今日は昼飯、一緒に食うか?”


 朝。メールの着信音で目が覚める。寝ぼけた手で枕元のスマホを取り上げ、覚束ない指先でスマホをタップして、一気に目が覚めた。穂積さんからのランチメール。


“はい。空けときます”


 私はベッドから飛び起きて浴室に駆け込むと、シャワーを浴びた。穂積さんに会えると思うとお洒落にも気合いが入る。髪を念入りに洗ってパックして、身体も念入りに洗う……と言ってもそういうことはしていないけど。ランチに行くと帰りには必ずキスをする。耳や首もとにも目が行くだろうからそのあたりだけはよく洗ってしまったり。

 浴室から出ると着信ランプが点滅灯している。


“予約しとく。じゃあ”


「予約……。どこだろう? でも楽しみ」


 あれから1ヵ月、穂積さんとの交際は順調に続いている。週に一度ランチに行く。かれこれ4、5回ランチに行ってるから社内の目撃情報も多く。先輩には穂積さんと付き合ってるのか?、とそのたびにしつこく尋ねられて。そのたびに、違う、とか、どうでしょうね、と誤魔化してきたけれど、そろそろ限界のように思う。

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