ウェディングドレスと6月の雨
 朝、コポコポという水の音で目が覚める。鼻を擽る香ばしい匂い。コーヒーだ。ぼやけていた視界がハッキリしてきて、ここが自宅のアパートでないことはすぐに理解して。


「弥生、おはよう」


 向こうで聞こえる男の声。穂積さんだ。穂積さんはカウンターの向こうに立っていて、マグカップを棚から取り出していた。


「おはよう……ございます……」


 肌がスルスルとする。くすぐったい感触。手を突いて起き上がってようやく気が付いた。


「朝から誘ってる?」


 ……裸。ショーツも履いていない!


「きゃあ!」


 掛け布団を引き上げて胸を隠す。穂積さんそんな私を見てクスクスと笑う。そうだ……昨夜は穂積さんちに泊まった。DVDを見てカレーを作って、抱きしめられて……。

 かあっと顔が熱くなる。


「大丈夫か?」
「シャワー、浴びていいですか?」
「ああ」


 穂積さんはクスクス笑う。私はベッドから降りて立ち上がった。裸だった。


「み、見ないで……」


 穂積さんは、はいはい、と言って後ろを向いた。

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