ウェディングドレスと6月の雨
突然のことに、どうしていいか分からず、私は呆然としていた。しゃがんだまま、彼を見上げる。その間にも雨は容赦なく降りかかる。背中も頭も雨水が染み込んでくる。
「乗れ」
「え……でも」
「いいから」
「で……きゃあ!」
再び轟いた雷鳴に私は耳を塞いで悲鳴を上げた。
「ほら。また鳴るぞ」
「す……すみません」
しゃがんでいた私は立ち上がり、社用車に乗せてもらった。
助手席のドアを閉めると車は動き出した。フロントガラスに大粒の雨が打ち付ける。ワイパーもハイスピードで腕を振るけど景色が見えないくらいの豪雨。ビルも舗道も同じ色目だからなおのこと、境目が分からないくらいだった。一面灰色の混沌とした世界。それでも目が慣れてきて、どこを走っているのか理解して、私ははっとした。
車は駅とも会社とも違う方向に進んでいる……。