ウェディングドレスと6月の雨
 ……穂積さんと食べたかったな。

 でも、いい。週末、穂積さんと2人切りの打ち上げだから。

 年代物の赤ワインの代わりに高田さんは白ワインをもらってきてくれた。そして高田さんのグラスと縁を合わせて乾杯した。


「ねえ、プレゼン、どうだった?」
「緊張しました」
「へえ。成瀬さんってそんな風には見えないけど。穂積に睨まれても動じないじゃん? 穂積、どうだった?」
「どうって……」
「アイツ、あんなに会議に遅刻してさ、ちゃんと分かってんのかって。やっぱりさ、神辺さんが絡んでるんだろう? 本社ご指名って、営業部長も言ってたじゃないか」


 高田さんが何を言いたいのか、分からない。高田さんの真意を知りたくて彼を見つめる。すると、高田さんは私の耳元に顔を近付ける。耳打ち。


「出来レースだったんじゃないのかってこと」
「出来……?」
「ある程度、契約の見込みが立ってて、お手柄を穂積に回したってコト」
「そんな……」


 確かにプレゼンは好感触だった。先方も穂積さんのことはお気に入りのようだったし、最初からうちの製品をと思ってる節はあった。でもそれは、穂積さんが今まで先方のアフターケアをしていたからみたいだし、決して本社のツテじゃないと思う。

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