ウェディングドレスと6月の雨
「いえ、本当に。ワインもそんなに得意じゃなくて」
「じゃあ、何なら得意なの?」


 そこまで押されて、タダのお詫びで誘われてるんじゃないって感じた。


「だから、あの、お気になさらないでください」
「駄目だよ、そんなの。奢るよ」


 高田さんの声の調子が強くなる。酔ってるからなおのこと……。一歩近寄られて私は一歩後ずさる。視界の隅にあった信号が青に変わった。

 その直後。高田さんがよろけて声を上げる。


「痛っ」


 肩を押さえていた。そしてその肩の向こうには……。


「高田、悪い」


 穂積さんだった。高田さんより少し背のある穂積さんは彼を見下ろしている。


「お前、わざと」
「暗くてよく見えなかった。お疲れ。じゃあ」


 穂積さんはそう言い捨てて、会社の方へ歩いていく。


「どうしたんですか?」
「いや、アイツがいきなりぶつかって来たから……何だよ、感じ悪い」


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