ウェディングドレスと6月の雨

 梅雨は明けた。7月下旬。駅構内から出ると眩しさに目をやられて思わず立ち止まった。手を翳して見上げると、ぱあっと晴れ上がった空。燦々と惜しみなく降り注ぐ太陽の光。朝から暑いけれど湿度は低く空気は爽やかだ。服はマリンルックを意識して白のノースリーブのシャツにブルーのカーディガンを重ねて出勤した。気分も上向きになる。

 オフィスに着くと先輩が先に出勤していた。課内でお金を出し合って買った老舗ブランドのアイスコーヒーのボトル、それを開けて紙コップに注いでいた。ひとつ差し出されてそれを受け取る。


「成瀬さん。なんだかすっきりした顔してる」
「そうですか?」
「うん。さては……」
「え?」


 瞳をのぞき込まれてドキリとした。


「ボーナスで何か買ったんでしょ。奮発して。あ、ルンバとか」
「ははは。ルンバも欲しいんですけど、ルンバが活躍できるほどの広さもないからルンバに失礼だから」
「そう。じゃあエスプレッソマシンとか」
「いえ、それも」
「じゃあ……男?」

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